校長ブログ

おがっちBlog

【おがっちBlog40】至極の一杯。

 先日、ある先生から

「美味しいお蕎麦屋さんがあるのですが、

もしよろしければ、一緒にどうですか?」

と誘われた。

 蕎麦は好きであるが、その先生が私に声を

かけてくれたことも嬉しかったので、喜んで

出掛けた。

 会津坂下町の民家で営んでる、「由庵」。

御主人は初対面であるにもかかわらず、気さくに

話をしてくれる。その対応が心地いい。

 聞けばその御主人、職業は高校の国語教師

だったらしく、「常々、退職後の人生を考えた

とき、自分が好きなことをして過ごしたい。」と

思っていたらしい。そんな時、たまたま蕎麦打ち

の経験をし、「初めはそれほどやる気はなかった

が、上達していくにつれ、ハマってしまった。」

という。

 そこからの拘り具合は半端なく、拘り抜いて

今に至るのだそうだ。

 保健所から認可を受けた蕎麦打ち場所を

拝見し、食事場所へ案内される。

 日常生活で食事をしているという

その場所は、既に準備が整っていた。

 そばつゆは、薬味のからし大根と

わさび用の2つ準備してあった。

 急激にお腹が空いてきた。

「地物のわさび、たまたま手に入ったんだよ。

これで新蕎麦食べれるなんて、贅沢だよね。」と

鮫皮おろしで、そのわさびをおろしながら

ほほ笑む。

 茹であがった蕎麦を、流水でぬめりを落とす

ために水を入れ替えて(半分の水)、2度の

もみ洗い。そして丸いざるへ。(丸いざるにも

拘っている)

 更科蕎麦がこんなにも輝いて見えたのは、

初めてだ。白く光っているのである。

 先ずは、わさび入りのそばつゆで頂く。

香り、味、喉ごし。全てが絶妙のバランスで

美味しい。なんとも言えない幸福感で心身共に

満たされる。からし大根も、ひけをとらない。

 まさに、至極の一杯とは、このことか。

 「拘る」ことは、未見の我を見つけ出す為に、

必要なことなのだ。

 この御主人、拘ることに拘り、コーヒー、

緑茶、もやし炒め、だし巻き卵、そして、

自分で身につける袢纏にまで、拘りだして

いる。

 文化は、人生を豊かにするための一つの

ツールであるが、その選択は人それぞれ。

どのようなきっかけであれ、ハマったもん勝ち

であることに間違いはない。

 最後まで、御主人の話は尽きることが

なかった。そして、自分の人生を大いに

愉しんでいる姿が羨ましくなった。

 素敵な出会いに、感謝。