【こうちょうブログ007】 「美意識」という力
2025年10月1日 18時12分つい先日まで酷暑の日々が続いておりましたが、ここにきて、ようやく過ごしやすい季節となりました。ひんやりと新鮮で、どことなく感傷的な朝夕の空気を味わいながら、「やっぱり、一番好きな季節は秋だなあ」と、それだけで、しみじみと生きていることの充実感のようなものを感じたりしています。
10月といえば、神無月。ちょっとだけ調べると、平安時代の書物には既に、「神無月には諸国の神様が出雲の国に集まる」ため、諸国には神様が居なくなるから「神無月」という記載があるそうです。しかし元々は、10月は、稲作文化の日本において、収穫祭を行う一年の中でも最も重視された特別な月であり、「神の月」とされていたということのようです。
春、どこからかやってきた神様は、豊かな実りを恵んだ後、秋、またどこかへと去って行く、神様の旅立ちの月。それが、日本人が永く描いてきた自然と神様のビジョンなのですね。(なんと素朴で神々しくて美しいビジョンなのでしょう!)
美しいといえば…。
去る9月20日(土)に、会津まつりの会津藩公行列が行われました。会津まつりは、1928年に会津藩主 松平容保公の孫娘 松平勢津子と秩父宮雍仁親王の成婚を祝して行われた行事がルーツとのこと。藩公行列は、会津藩の歴代領主の隊が現代に蘇ったかのごとく、それぞれの時代の会津若松市ゆかりの地から参加される方々などが、武者や姫の衣装を纏い行進する、まさに時代絵巻なのです。
今年度は、若松一中と本校が当番校であり、本校からは総勢36名の生徒たちが参加、出陣式での舞踊部による演舞や領主松平公時代の「旗持ち」「娘子隊」「中野竹子」「おけい」「輿役」の役を務めました。この参加に際して、自分たちが扮する人々が生きた時代の歴史と、幕末の会津を生き抜いた方々が命がけで守った「こころ」について学ぶために、福島県立高校の日本史の教師を長く務めてこられた髙田良一先生にご講演をいただきました。実は、私自身、会津藩公行列を目の当たりにしたのは今回が初めてでした。その衣装もさることながら、当時の方々の生き様は、本当に痛ましい悲劇でもありますが、強い美意識を感じます。美意識とは、真実で誠実であること、道徳的で正しさを求める態度、そして、美しく調和し魅力的に生きる姿勢のこと、でしょうか…。
幕末当時、日本の社会は激しく変化するうねりの中で、まさに不安定で、不確実で、複雑で、曖昧な、予測困難な「VUCA」の時代であったのだと思います。突発的で想定外の状況の変化に対して「どう対処すべきか…。」おそらく、情報を元に論理的に考えて正解を出そうとしても判断がつかないような時代であったのだと思います。自分たちの人生がかかっている命がけの決断の最後のよりどころは美意識だったのではないか。そんなことを思い浮かべながら、まつりのひとときを過ごしておりました。
私たちが生きている今の時代も、「VUCA」の時代と言われています。幕末の方々の人生が作品のようなものとして語り継がれるように、私たちの人生の営みも「作品を創っている」と捉えることができるのかもしれません。
校長室の壁には、かの新島八重氏直筆の書「美徳以為飾」(美徳を以て飾と為す)すなわち、「外見ではなく、人として内面を磨き、その内面の美しさを飾りとして生きる」という決意の書が掲げてあります。贅沢なことに、この素晴らしいメッセージの書を毎日見つめながら、これからの時代を生きる者として、「美意識」という人間ならではの力を大切に育てていく必要があると心から思うのです。