校長ブログ

【おがっちBlog88】「三分の一の悪人」

 この言葉は、諏訪中央病院名誉院長である

鎌田實(みのる)氏の言葉である。鎌田氏は国際

医療支援や作家としても幅広く活躍している方で

あるが、私は、ある本を読んでいる中で、鎌田氏

のこの言葉に興味を惹かれた。

 鎌田氏は、日本を代表する臨床心理学者である

河合隼雄氏の「三分の一の常識人」という言葉

から自分なりに考えた言葉であると話していた。

それは、「三分の一の常識人」が自分の中に存在

するという河合氏の言葉から、鎌田氏は「自分の

中に「三分の一の悪人」がいるんだと納得する

感情が存在し、むしろその悪を知っているから

こそ、これまで医師と作家という仕事を続ける

ことができた。河合先生が「三分の一の常識人」

によって世の中を生きていくことができたと

すれば、私の場合には「三分の一の悪人」が表に

でないようにすることが、働くことであり、

生きることだったのかもしれない。」と話す。

河合氏の言葉については、河合氏の愛弟子といわ

れる皆藤章氏は「全部でも、半分でもなく三分の

一だからこそ、自分の個性を十分に発揮しつつ、

世の中の常識、ルールに則って生きていける。」

と解説している。そして、河合氏も「これが、

二分の一の常識人」だったら、きっと模範的では

あってもつまらない人間になるでしょうし、私も

「二分の一の悪人」だったら、今頃どうなって

いたか分からない。」と話していた。

 自分のことは自分がよくわかる。と一般的に

使われる言葉はあるが、善も悪も、それが自分の

中でどの位の比重を占めているか分からないし、

自分は悪い部分が多いのではないか、常識が

備わっていないのではないか等々、自己嫌悪に

苛まれることは度々ある。

 そんな中、私はこの「三分の一の悪人」という

言葉を聞いて変な安心感が生まれた。つまり、

完璧な人間など存在するはずはなく、誰しもが

善と悪を持ち合わせ、悪の自分が出てしまった

ときに後悔し苦悩する。悪を存在させたくない、

自分から排除しなければならないと考えるのでは

なく、自分の中にも悪は三分の一存在し、その

ことを自覚しながら、その悪が出ないように

意識し、残りの三分の二が自分にとって大切に

しなければいけところと肝に銘じ生きていくべき

ではないかと考えたからである。

 キミたちは、自分の悪にどう向き合っている

か、考えてみてほしい。